0.2せん妄対策の目標

...苦しい体験からくる不安を和らげる

せん妄対策の目標は「せん妄をよくする」ではありません。何度も述べていますが、せん妄は原疾患の改善が最重要です。そのために、原疾患の治療が上手くいくように入院生活を整えること、そのためにどうやって医療者が行動したらいいか、これがせん妄対策の本体です。では、医療者は何をすればいいのでしょうか。

■せん妄は苦しい体験

 

 「昨日のことは覚えているからせん妄ではない」とよく聞きます。しかしそうでしょうか。せん妄は酔っ払いでしたね。酔っ払っているときの記憶は不完全でもちゃんとあります。つまり、上記のような「異常な体験」を患者さんは部分的にでも覚えていることが多いのです。このような苦しい体験をするから、それから逃げようと「困った行動」をせざるを得ないのです。

ならば、せん妄の困った行動を減らすために医療者が取るべき行動は、苦しい体験からくる不安を和らげること、これが何をすれば良いかの一番の道しるべです。

 

■せん妄症状をよくする治療?

せん妄症状を改善するためのせん妄治療は、ときに原疾患の改善のための病棟生活の現実的な対応とは別になってしまうことがあります(まずは原因治療と言うけれど...)。まずは、限られたマンパワーで病棟全体の安全が保てることが重要になります。
この違いを常に意識していま何を行っているかを考えるのも、とても大切なことです。
「せん妄対策の第一歩は夜寝てもらう」です。この対策に病棟が慣れて余裕が出たら、単に寝かせるのではなく、予防対策や最小限の薬剤で対応可能かどうかの見極めなども出来るようになってきます。
 
最終的に「最善のせん妄治療」に近づいていくのが大きな目標であることも忘れないでください。 

せん妄対策の行動目標は、患者さん・家族の苦しい体験からくる不安を和らげること!

 

最終更新日2016.3.10 



1)Seymour CW, et.al.JAMA. 2016 Feb 23;315(8):762-74. doi: 10.1001/jama.2016.0288.