1.1まずは原因治療と言うけれど...
逆説!せん妄対策の第一歩は「夜寝てもらう」
せん妄治療の鉄則
寝かせることが治療ではない。原因を取り除くことが第一。薬はその後
いません妄患者さんを目の前にして、その治療をどうするか考えるとき、この鉄則は絶対です。
しかし病棟でせん妄に困る場面は、夜間の不穏・危険行動であることが大部分です。
絶対に無理ですよね。医師にコールしても「不眠・不穏時指示を使ってください」となるでしょう。医師が駆けつけて検査一式「せん妄は引き算」なので薬を中止して...あり得ません。そもそも、引き算と言っても、寝る前の薬まではしっかり投与済みです。
つまり、「せん妄への治療を考えるとき」と「せん妄対策の第一歩」は出だしからして異なる概念なのです。
治療と対策は異なる
せん妄対策の第一歩で何より重要なのは、せん妄が顕在化しやすい夜間、少ないスタッフで医療安全がとにかく図れる、この一点につきます。つまり、夜寝てもらわないとダメなのです。
その意味で、ハロペリドール(セレネースⓇ・リントンⓇ)やリスペリドン(リスパダールⓇ)はほとんど無力です。ですから「薬を使ってもせん妄に困る」という現場の切実な声が減らないのだと思います。
ポイント! せん妄治療とせん妄対策の違いを意識する
困っているあなたに、今必要なのはせん妄対策の第一歩「夜、しっかり寝てもらう」
せん妄治療は「患者さん本人を対象」としており、治療学=医学です。「○○という治療が一番」が存在しえます。
しかし、患者さんに対応する医療者がどしたらよいか、言い換えると「医療者を対象」とするのがせん妄対策です。患者さんだけでなく、医療者の状況、医療環境も様々ですから、「ある現場ではこうするのがよい」が、他の現場にそのまま持ち込めるとは限りません。しかし治療という学問の中に、医療者の個々の実情にどう対応する、というファクターは存在しません。
せん妄治療は原因治療が一番です。現実の治療は、適切に行える環境があってはじめて成立します。リアルワールドでは「その現場の医療者が対応可能である」という重要なファクターが必須なのです。ですから、せん妄治療とせん妄対策は両輪でありながら、それぞれ異なったものになるのです。
夜の対策のその後
もちろん、夜の対策がしっかりできるように現場がなれば、次の日中に考えることは、せん妄治療です。原因をしっかり取り除き、不要な薬を中止しましょう。不快な症状の軽減や環境を整えるケアも重要です。
このサイクルが回り出させば、現場に余裕ができることになります。「夜はなんとかなるから、頑張ろう」です。
現場に余裕ができたら、今度は薬に頼りすぎることがなくなってきます。予防も考えられるでしょう。こうなればせん妄対策の流れが完成し、真にせん妄治療とせん妄対策が両輪として一致するようになるでしょう。
そこまでたどり着くまでのいわば"橋渡し"として、フールプルーフせん妄対策は考案されました。
最終更新日2016.3.1