2.6夜の薬は眠るまで

中途半端なら使わない方がマシ


せん妄は意識障害で、催眠作用により悪化する可能性があることは何度か触れました。しかし夜は寝てもらう必要があるので、眠くなる薬剤を投与します。つまり、 眠くなる薬は、眠るまでしっかり使わないと逆効果になるわけです。

 

せん妄が悪化?

よく「○○をつかったらかえってせん妄が悪化したので、追加では使わなかった」と翌朝に看護師に言われることがあります。これがまさに、眠くなる薬を投与→不十分で眠れない→中途半端な意識障害を引き起こしてせん妄がさらに悪化、という典型例です。
 
「酔っ払いに中途半端に酒を追加すると、たちが悪くなる」と一緒です。十分使えないなら、使わない方がマシになります。
 
せん妄治療で、ハロペリドールをまず投与、だめならBZ作動薬で寝かせる、というものがあります。これ自体は前項で見たとおり正しい順番です。
 
 

実際に睡眠薬を追加使用できるのか

しかし一般病棟で、BZ作動薬つまりは睡眠薬をどんどん追加で飲ませて、という指示が通用するでしょうか?多くの場合「呼吸抑制が怖いので追加できない」とならないでしょうか。
 
特に高齢者/重症者では内服困難な場合も多く、するとミダゾラム(ドルミカムⓇ)などを十分追加して、ことになります。 これは不慣れな病棟でおこなうと命の危険も生じるために、正しい治療が正しく実行できないことになります。
 
プールプルーフせん妄対策では、呼吸抑制がこない薬剤を催眠の主剤としてつかうために、看護師さんも躊躇なく、安全に十分追加使用できるように配慮してあります。
 

さらに、夜間は眠らせる、日中は起こすことを考えると、過量の薬剤も避けたいところです。すると、作用が穏やかな薬剤を継ぎ足しで十分使い、その人に最適な投薬量を決定する、これがせん妄対策の鍵の一つとなってきます。
 

翌朝の結果を基に、しっかり寝てかつ朝は起きれるために増減することも重要です。
 

ポイント:眠くなる薬は寝るまで使う。寝過ぎたら減量。

 
ここまでで、おおよそくすりの基本はみてきました。次からは、いよいよ実際の薬剤の使い方になります。
 

最終更新日2016.2.29

 
せん妄は意識障害で、催眠作用により悪化する可能性があることは何度か触れました。しかし夜は寝てもらう必要があるので、眠くなる薬剤を投与します。つまり、眠くなる薬は、眠るまでしっかり使わないと逆効果になるわけです。

 

せん妄が悪化?

よく「○○をつかったらかえってせん妄が悪化したので、追加では使わなかった」と翌朝に看護師に言われることがあります。これがまさに、眠くなる薬を投与→不十分で眠れない→中途半端な意識障害を引き起こしてせん妄がさらに悪化、という典型例です。
 
「酔っ払いに中途半端に酒を追加すると、たちが悪くなる」と一緒です。十分使えないなら、使わない方がマシになります。
 
せん妄治療で、ハロペリドールをまず投与、だめならBZ作動薬で寝かせる、というものがあります。これ自体は前項で見たとおり正しい順番です。
 
 

実際に睡眠薬を追加使用できるのか

しかし一般病棟で、BZ作動薬つまりは睡眠薬をどんどん追加で飲ませて、という指示が通用するでしょうか?多くの場合「呼吸抑制が怖いので追加できない」とならないでしょうか。
 
特に高齢者/重症者では内服困難な場合も多く、するとミダゾラム(ドルミカムⓇ)などを十分追加して、ことになります。これは不慣れな病棟でおこなうと命の危険も生じるために、正しい治療が正しく実行できないことになります。
 
プールプルーフせん妄対策では、呼吸抑制がこない薬剤を催眠の主剤としてつかうために、看護師さんも躊躇なく、安全に十分追加使用できるように配慮してあります。
 
さらに、夜間は眠らせる、日中は起こすことを考えると、過量の薬剤も避けたいところです。すると、作用が穏やかな薬剤を継ぎ足しで十分使い、その人に最適な投薬量を決定する、これがせん妄対策の鍵の一つとなってきます。

 

翌朝の結果を基に、しっかり寝てかつ朝は起きれるために増減することも重要です。
 

ポイント:眠くなる薬は寝るまで使う。寝過ぎたら減量。

 
ここまでで、おおよそくすりの基本はみてきました。次からは、いよいよ実際の薬剤の使い方になります。
 

最終更新日2016.2.29



参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
小川朝生: 自信が持てる!せん妄診療はじめの一歩. 羊土社, 2014
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012