5.4その他の候補

バルプロ酸(デパケンⓇ)・トラゾドン(レスリンⓇ・デジレルⓇ)

 

抑肝散でもイライラ・興奮がおさまらない、幻覚・妄想へのアリピプラゾールも投与した、という場合の選択肢です。

バルプロ酸(デパケン

抗けいれん薬には全般的に感情安定作用・抗不安作用があります。抑肝散がメジャーになる以前から、認知症の周辺症状に使用されています。抗けいれん薬は複数ありますが、日中をターゲットにしていますので眠気があまり来ないバルプロ酸が良いでしょう。200mg分2~400mg分2程度の使用量になることが多いと思われます。
 
外来・施設の安定した状況でも感情安定が必要で、長期に使用する必要があり、不眠も併発しているような場合にはガバペンチン(ガバペン)・プレガバリン(リリカ)などもよい候補となります。

 トラゾドン(レスリン・デジレル

私の奥の手がトラゾドンです。トラゾドンは基本的には夜の薬剤で日中の薬剤とは区別していますが、他の薬剤が効果がないような興奮が強いような方に対しての催眠作用は比較的弱く、抗うつ剤として使用されるときも1日3回分服で使用されます。

イライラや興奮がこれまでの対策で落ち着かない場合、眠気が出ない程度の少量のトラゾドン(0.25錠~1錠)の内服で、不思議とぴたりと落ち着くことをこれまで数例経験しています。
 
この使用目的でのエビデンスはありませんが、フールプルーフせん妄対策ではトラゾドンを多用しているため、スタッフにもなじみがある薬剤として、候補に入れてあります。
 


最終更新日2016.3.16



参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012