5.4幻覚・妄想があるなら

アリピプラゾール(エビリファイ)

 

抑肝散でイライラを抑えればOK…当然そうは問屋はおろしません。イライラによる症状だけではなく、意識低下による脳機能・状況認識力の低下からくる不安・恐れなどが興奮や強い苦痛となって症状に表れることが多いのです。また、このようなときの幻覚・妄想は特に強い反応を引き起こします。ですから、日中のせん妄でも幻覚・妄想があるかどうかきっちり尋ねることは大切です。
 
幻覚・妄想があるとき、低活動性せん妄では、錐体外路症状が少ないアリピプラゾールが有用です。

アリピプラゾール(エビリファイ)はどんな薬?

D2受容体を不完全にしか遮断しないのが特徴です。しかしこれは80%以上の遮断のリスクが少なく、利点となります。作用を見て分かるとおり、催眠作用がほとんどありません。さらに5HTの作用から、他の(D2)主体の抗精神病薬ではなかなか効果のない低活動性せん妄にも、効果が期待できるともされています。
 

注意する点は?

やはり少なめの使用がよいでしょう。3mgが最小規格ですが、1.5~3mgで使用するのが無難だと思われます。眠気が来ない薬剤のため、効果が出た後に漫然と使用しないようにする注意は必要です(せん妄が治ったあとに抗精神病薬を継続してしまうリスク)。
 

どう使う?

日中に幻覚があるときの頓用、あるいは翌日からの数日間限定の定期使用が良いでしょう。
 
錠剤や液剤がありますが、可能なら液剤の規格のほうが飲みやすくて良いと思われます。この薬剤を使用するときには、日中幻覚が問題になっているはずなので、少量の水に溶いてコップに入れておき、自発的に飲むのを待つという使い方もあります。ただ、リスペリドン液のように無味無臭ではありません。
 
眠気の来ない抗精神病薬としては、ブロナンセリン(ロナセン)も選択肢となるようです。


最終更新日2016.3.15



参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012