5.2イライラするなら

抑肝散

 

抑肝散はどんな薬?

最近、認知症の周辺症状でもよく使われている薬剤です。もともと小児の夜泣きの薬で、

私も飲んでいます。 子どもがいたずらして怒鳴りそうなとき、夫婦げんかしそうなときなどに、さっと一包。 スッとした飲み口で、速効性があってイライラが半分になるかんじです。

 
漢方には母子同服という言葉があって、抑肝散が代表格だそうです。決して「認知症高齢者」「精神科」の薬というわけではありません。
 
一方で飲み口がよいことから、拒薬されにくい、あるいは「あの薬は良い」と求められるほどのことがあるのは、他剤ではなかなか経験されない利点です。
 

注意する点は?

カンゾウが3包に2g含まれています。一般には4gまで大丈夫とされていますが、高齢者は代謝が落ちているので半分量が基本です。すると、すべての高齢者に3包漫然と飲ませてしまうと、偽性アルドステロン血症で、低カリウム血症・浮腫・心不全の増悪などが引き起こされることがあります。
 

どう使う?

比較的速効性があるので、頓用でも使えます。せん妄やイライラが出るパターンが分かっていれば、その前に定期内服するのが良いでしょう。夕方からイライラすることが多いので、15時頃の定期内服もお勧めです。効果があると、夕食後薬の拒薬を防ぎ、夜間の安心/安全確保にもつながります。
 

ポイント 3時のおやつに抑肝散



最終更新日2016.3.15



参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012