4.6睡眠薬常用・アルコール常飲の場合
ベンゾジアゼピン
睡眠薬を常用している方は決して少なくないでしょう。また、アルコールを常飲している場合も、対策がこれまでと異なってきます。
睡眠薬もアルコールも、脳内ではBZ受容体に働きます。両者の作用が非常に似ているのはこのためです。長期連用者が急に中断すると離脱症状がおこるのも一緒です。アルコールは言うまでもなく、BZ作動薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系を問わず)も常用量依存が問題となっています1)
とはいっても入院は待ったなしであるため、入院せん妄を考える場合には、離脱症状による反跳性不眠・せん妄を念頭に置く必要があります。
どのように使う?
一般に、薬物の離脱症状を抑えるのは、それより少量の薬剤の投与で十分です。そのため、少量のベンゾジアゼピンを投与するのが良いと思われます。
日中もアルコールの離脱症状が出現する場合には、作用時間の長いベンゾジアゼピンであるジアゼパム(セルシンⓇ・ホリゾンⓇ)が使われます。BZ作動薬がそこまで離脱症状を起こすことはあまりないと思われますが、BZ作動薬の断薬にも作用時間の長い薬剤への置き換えは良く行われます。
日中の離脱症状がない場合には、むしろ日中まで効いてしまうBZ作動薬はせん妄を悪化させますので、夜間のみ作用する少量のBZ作動薬で良いことになります。
ただ、入院となる疾患の影響も当然にあることから、純粋に離脱せん妄であることは少ないと思われますので、BZ作動薬の単独投与より、(D2)や(5HT2A,2C)の先行投与・併用をお勧めします。
フールプルーフせん妄対策では、グルクロン酸抱合代謝により肝機能の影響の受けにくい薬剤として、抗不安薬:ロラゼパム(ワイパックスⓇ)、睡眠薬:ロルメタゼパム(エバミールⓇ)を候補としてあげておきます。
ポイント 睡眠薬常用者では少量継続しつつ、夜間の薬剤(D2),(5HT2A, 2C)を使用
最終更新日2016.3.9
1)松本俊彦. 処方薬乱用・依存から見た今日の精神科治療の課題:ベンゾジアゼピンを中心に. 臨床精神薬理 Vol. 16 2013, 804 (星和書店)
参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012