4.4夜の内服薬(3)

クエチアピン(セロクエル)

 

もう一つの第二選択は、クエチアピン(セロクエル)です。

クエチアピンはどんな薬?

こちらも(H1)が強く、催眠作用がトラゾドンよりしっかりあります。加えて弱いながら(D2)も持ちますので、専門家からもせん妄の第一選択に挙げられることが多い薬剤です。(D2)が弱いことは欠点というより、むしろ利点となります。作用時間も8時間前後と適切で、次の一点を除けば、間違いなくせん妄における第一選択薬でしょう。

注意する点は?

糖尿病で禁忌のため、少なからずの患者で不適切となり得えます。糖尿病の場合はリスペリドン(リスパダール)を推す超えもありますが、クエチアピンほどしっかり眠れるまで増量するのは困難です。また、リスペリドンも禁忌ではありませんが、耐糖能への影響は指摘されているため、特に入院の状況では避けた方が良いかも知れません。
 
頻度の高い糖尿病で禁忌となるため、頓用指示として常時指示するより、安全が確認できた患者に限定して指示変更する方が、医療安全上は好ましいと考えられます。そのため、この対策では2nd. lineとして取り上げています。
 
また、抗精神病薬であるため、近年の認知症高齢患者での投与の注意喚起1-2)も、念のため意識はする必要があるでしょう。

どうやって使う?

0.5~1錠から開始、4錠(100mg)程度まで増やすのが基本です。ミアンセリンと同じく、トラゾドンの次の薬と指定しても良いでしょう。精神科領域では500~600mg程度まで増量することもある薬剤ですが、目的が違うので100mgを一応の目安としています。
 

ポイント 有用な薬だが、糖尿病禁忌が玉にキズ。糖尿病がないことを確認してから個別に指示を出すのが安全

 


最終更新日2016.3.9



1)Shcneider LS, Dagerman K, Insel PS : Risk of death with atypical antipsychotic drug treatment for dementia : meta@analysis of randomized placebo - controlled trials JAMA  2005 ; 294 : 1934-1943,
2)American Geriatrics Society 2012 Beers Criteria Update Expert Panel: American Geriatrics Society updated Beers Criteria for potentially inappropriate medication use in older adults. J Am Geriatr Soc 2012; 60: 616-31.
 
参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012