4.3夜の内服薬(2)

ミアンセリン(テトラミド)

トラゾドンで効果が不十分な場合の選択肢は二つあげています。まずはミアンセリン(テトラミド)からいきましょう。

ミアンセリンはどんな薬?

四環系と呼ばれる抗うつ薬です。日本では60mgまで増量できますが、もうすこし高用量でつかうと効果があるとのご意見もあるようです。ということは、この対策で「余計な副作用が少ない」という点にはマッチすることになります。
(5HT2A, 2C)だけではなく(H1)が強く、催眠作用がしっかりあります。抗うつ薬としては欠点の一つでしたが、夜間の不眠を考えると利点でもあるので、使われる場合もまだまだ在るようです。構造をわずかに改良したミルタザピン(リフレックス、レメロン)は、効果はしっかりあるのですが、逆に副作用で問題になることもあるので、高齢者・入院患者さんではミアンセリンの方がずっと穏やかです。
 
せん妄を抑える効果も小規模ながら報告され1)高齢者の不眠症対策として使用される場合もあるようです。このあたりはトラゾドンとほぼ同じ位置づけになります。

注意する点は?

作用時間が長いことが欠点となります。半減期は十数時間となりますので、遷延する場合が結構あります。その場合は、減量、もしくは他剤への変更が必要となります。
その他の注意点はトラゾドンとほぼ同様です。

どうやって使う?

トラゾドンで効果がなかった場合に追加で使用することもできますが、その場合は半減期が長いことに留意する必要があります。その1日だけトラゾドンに追加使用、翌日からはトラゾドンに変えて、最初からミルタザピンにすると良いでしょう。うつ病としての開始量は30mgなので、この対策では3~4錠を上限としています(個人的には3錠にしていますが、4錠の方が他の薬剤と一致していて覚えやすいかも知れません)。
 

ポイント 高齢者の睡眠薬代用としても用いられるが、遷延には注意

 


最終更新日2016.3.9



1)Uchiyama M, Tanaka K, Isse K, et al. Efficacy of mianserin on symptoms of delirium in the aged: an open trial study. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 1996(20), 651-656
 
参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012