4.1内服できるとき

夜間の薬剤の概説

ポイント1 (5HT2a, 2c)を第一選択、(H)を第二選択

内服できる場合、注射薬にはない選択肢ができます。高齢者・体調悪化していても比較的安全な催眠作用として、(5HT2a, 2c)が挙げられます。とくに、2cは深睡眠の増加作用があり、浅睡眠の増加しかもたらさないBZ作動薬(ω)より、夜間の睡眠をもたらす薬剤としても適切です。
催眠効果が不足の場合は、(H1)が出番です。

ポイント2 夕食後定期投与、1時間後に追加し、寝るまで投与

最高血中濃度が2時間後の薬剤も取り上げていますが、これらは比較的穏やかな作用のため、実務としては1時間おきの追加がよいでしょう(看護師さんへの指示が統一できるメリットがあります)。
 
夕食後を基本とするのは、就前(21時)内服だと、効果が乏しくて追加内服するのが22~23時、1回の追加で難しい場合は深夜に追加することになってしまい、翌朝の遷延になりやすいからです。18時半~19時の夕食後だと、追加1回目が20時~21時、2回目が21~22時、3回目が23時ごろと、計4回の内服チャンスが生まれます。

ポイント3 クエチアピン(セロクエル)は第二選択

多くの専門家がせん妄の第一選択に挙げるクエチアピンですが、高齢者で頻度の高い糖尿病が禁忌なのが大きな問題点です。院内せん妄対策を考えた場合、様々な状況での指示となりますので、第二選択の方が安全と考えます(詳細は個別項目で)。

ポイント4 ラメルテオン(ロゼレム)は予防的に併用

ラメルテオンはせん妄予防効果の可能性も指摘されている1)ため、ハイリスクの高齢者などは入院時や手術数日前から内服することが勧められます。

ポイント5 睡眠薬常用者には、(ω)の少量継続が無難

睡眠薬を数ヶ月以上内服している場合、常用量でも依存の可能性があります。急激な中断による不眠・離脱せん妄の恐れがありますので、減量・変更した上で継続するほうが無難な可能性があります。
 

最終更新日2016.3.5



1)Hatta K,et al. Preventive effects of ramelteon on delirium: a randomized placebo-controlled trial. JAMA Psychiatry 2014;71:397-403.
 
参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012