2.4不眠・不穏時をやめる
日中・夜間に分ける指示
前項で見たとおり、ハロペリドール(セレネースⓇ・リントンⓇ)やリスペリドン(リスパダールⓇ)は夜間に眠ってもらうための指示としては不十分です。
せん妄は意識障害ですから、意識を混濁させる薬剤は基本的にせん妄を悪化させる恐れがあります。しかし、夜間は医療安全・治療の遂行のためにしっかり眠ってもらわないと困ります。
ここが、せん妄治療とせん妄対策の根本的なジレンマです。
不眠・不穏時と書いた場合、日中に寝かしたくないけどおとなしくさせたいのか、夜間にしっかり眠らせたいのか、意図が不明確になります。
不眠・不穏時と書いてしまうと
たとえば、せん妄の第一選択となるハロペリドールを「不眠・不穏時」指示として出してしまうと、夜に困った看護師さんが使おうとしても、眠らせる作用はないわけですから「夜間まったく効かない(寝ない)」ことになってしまいます。
ハロペリドールは、「幻覚・妄想を抑えて、怖い体験を減らすことで不穏を減らす」目的の薬剤ですので、日中の不穏(幻覚を伴う)場合に指示すべき薬剤なのです。
つまり、日中には眠くならない薬、夜間にはしっかり眠る薬を指示することが必要となります。
ポイント「不眠・不穏時」ではなく、「日中の指示」「夜間の指示」と分けることが重要
最終更新日2016.2.29
参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
小川朝生: 自信が持てる!せん妄診療はじめの一歩. 羊土社, 2014
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012