2.3リスペリドンはこんな薬

...だから効かないリスパダール

リスペリドンの作用

  リスペリドンは強い(D2)、弱い(α1)、強い(5HT2A)、弱い(H1)を持つ薬剤です。(5HT2A)は錐体外路症状を軽減するために、非定型抗精神病薬を特徴付ける薬効となります。
 
ただ、(5HT2A)単独では十分な入眠は得られにくく、リスペリドンで催眠作用の主となる(H1)も弱いのです。つまり、かなり増量しないと眠ることができませんが、(D2)は非定型抗精神病薬の中でも比較的強いために、十分増量してしまうとハロペリドール同様の副作用が問題となってきます。
 
リスペリドンは夜間には十分眠れないため力不足となります。一方で、日中は軽い催眠作用から、せん妄症状を増悪させてしまうことになります。せん妄対策では使う状況がきわめて限定される薬剤と私は考えます。
 

ポイント:リスペリドンは使う状況がきわめて限られる
眠らせたい場合、眠らせたくない場合、どちらでも中途半端


最終更新日2016.2.29



1)de Haan, L., et al.Subjective experience and D2 receptor occupancy in patients with recent‒onset schizophrenia treated with low‒dose olanzapine or haloperidole:A randomized, double‒blind study. Am J Psychiatry 2003 ;160: 303‒309
2) Kalisvaart KJ, de Jonghe JF, Bogaards MJ, et al. Haloperidol prophylaxis for elderly hip-surgery patients at risk for delirium: a randomized placebo-controlled study. J Am Geriatr Soc. 2005

参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
小川朝生: 自信が持てる!せん妄診療はじめの一歩. 羊土社, 2014
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012