2.2ハロペリドールはこんな薬

...だから効かないセレネース・リントン

ハロペリドールの作用

  ハロペリドールは、強い(D2)、弱い(α)を持つ薬剤です。ハロペリドールの真実でも触れたとおり、D2受容体は約6~8割の遮断が望ましく、ハロペリドール注の至適用量は1~1.5mg(0.2~0.3A)程度でしかありません1)
 
特に、数日以上連用される可能性がある場合にはこの量が基本となります。至適用量では(α)は非常に弱いために鎮静作用はあまり期待できません。
 
これらを総合すると、ハロペリドールは(D2)つまり、幻覚・妄想の症状を抑えるために使用される薬剤となります。
 
「不眠・不穏時 セレネース」はせん妄の幻覚・妄想にしか効果がないため、「寝ない、落ち着かない、効かない」になるわけです。
 
一般に使用されることの多い2.5~10mgでは、一定の鎮静作用が得られる場合もありますが、副作用領域での使用となります2)。数日以内に限定しないと、錐体外路症状、嚥下機能障害、アカシジアにて不穏、という結果になりやすくなります。錐体外路症状についてはこちらでも触れています。
 

ポイント1:ハロペリドールは幻覚、妄想を抑える目的に使う。寝ることを期待しない。
ポイント2:0.3ml=1.5mgを基本に!


最終更新日2016.3.15(錐体外路症状のリンクを追加)



1)de Haan, L., et al.Subjective experience and D2 receptor occupancy in patients with recent‒onset schizophrenia treated with low‒dose olanzapine or haloperidole:A randomized, double‒blind study. Am J Psychiatry 2003 ;160: 303‒309
2) Kalisvaart KJ, de Jonghe JF, Bogaards MJ, et al. Haloperidol prophylaxis for elderly hip-surgery patients at risk for delirium: a randomized placebo-controlled study. J Am Geriatr Soc. 2005

参考文献(薬剤共通)
Stephen M. Stahl著 仙波純一,他監訳.ストール精神薬理学エセンシャルズ 第4版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
神庭重信監修. カプラン精神科薬物ハンドブック第5版、メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2015
長嶺敬彦. 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」、医学書院, 2009
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015
小川朝生: 自信が持てる!せん妄診療はじめの一歩. 羊土社, 2014
David M. Gardner, Ross J..Baldessarini, Paul Waraich. Modern antipsychotic drugs: a critical overview. CMAJ. 2005;172; 13:1703-11.
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012