先ほどの図でせん妄の特徴をおおよそ表現しています。土壌を悪くする原因（直接因子）があって、それだけではなく、環境（誘発因子）もあり、もともと木が弱っていたらおこりやすい（準備因子）ことになります。

直接因子（せん妄を引き起こす原因）＝土壌悪化：からだの原因・薬
誘発因子（せん妄を増悪・発症しやすくする要因）＝環境など：日内リズム、ストレス、不快な症状
準備因子（せん妄になりやすい人）＝木自体の健康：年齢、基礎疾患など

 
「せん妄」「精神症状」だと身構えてしまいますが、「酔った人への介抱」なら誰もが経験があると思います。せん妄の対応・ケアって、意外と普通のことでしかありません。

せん妄→身体状況のせいで脳細胞も調子が悪い

　治療で大事なのは、なぜ土壌が悪くなったのかです。土壌が悪くて幹が弱っているのに、枝や葉への薬（抗精神病薬）でなんとかというのは、無理な相談です。ちゃんと土壌＝からだの専門家が、しっかり診療するのが本筋ですよね。術後や肺炎で体調が悪い、食欲がないは当たり前ですね。それと同じ感覚で脳も調子悪い、ことになります。

 不安（精神）や環境が原因でせん妄になるのではなく、せん妄だから不安（精神）になったり環境変化に弱くなる。

近年、せん妄の原因の一つとして炎症性サイトカインが挙げられています。これが脳血流関門(BBB)に作用してしまい、脳機能を乱すとされています。せん妄というと、とかく「精神的なもの」「不安だからせん妄になる」「家に帰れば治る」という考えになりがちです。
でも、不安だからといってサイトカインによる脳機能不全にはなりませんし、不安が治ればサイトカインの原因の肺炎が治るわけでもありません。
 
こでまで見てきたとおり、せん妄は身体の病気、原因を治さないと予後も悪くなるということが大切です。
 

最終更新日2016.3.3