せん妄治療の死角

うまくいかない5つのポイント(前編)

 ①〜③現場で使いにくい薬剤の問題

現場でおこっていること〜死角①  不眠時指示として、ハロペリドールやリスペリドンが出ている

 
せん妄で医療者が困るのは、第一に夜間の不眠です。しかし、ハロペリドール(セレネース・リントン)やリスペリドン(リスパダール)は、眠るための薬剤としては適切ではありません。
 
しかし、せん妄時の指示は「不眠・不穏時」であることが多いため、適材適所ではない薬剤を使う=ちゃんと寝てくれない、つまりは「セレネースやリスパダールを使っても効かない」ということになります。
 

 現場でおこっていること〜死角②   ハロペリドールは注意しないと副作用!

 
ハロペリドールの作用は、(1)精神症状への効果、(2)鎮静ですが、鎮静作用は非常に弱いため、鎮静するような量で継続すると、確実に副作用がでてきます。リスペリドンは少し催眠作用がありますが、同様な問題を抱えています。
 
多くの”正しい治療”でハロペリドールが使われているのは、「せん妄治療は初期の数日間で原疾患の改善により終了(あるいは内服に移行)」という前提があるからです。しかし、現場では、不眠時指示として使用されていることも多いため、正しい治療と現実のミスマッチが起こるのです。
 
長期に使用するとなると、精神科の薬の副作用をこまめにモニタリングしながら、というのは"肉屋のスキル"になるため、難しくなってきます。
 

 現場でおこっていること〜③ 睡眠補助には注射のBZ...使いにくい

 
ハロペリドールでは薬理学的に眠れない、ならばどうするか。標準的にはミダゾラム(ドルミカム)などの注射のベンゾジアゼピンとなります。しかし、一般病棟で注射のミダゾラムは「呼吸抑制の恐れ」があるためになかなか使用できません。つまり、これを使いこなす"肉屋のスキル"がないと、うまく働かないのが「正しい治療」になってしまうわけです。
 

 

 
最終更新日2016.2.21