せん妄治療の死角
うまくいかない5つのポイント(後編)
④〜⑤高齢者の急増による問題
現場でおこっていること〜④
高齢者の急増:内服困難
ここ10年で高齢入院患者さんがとても増えています。せん妄の正しい治療は、数日間で注射からより安全な内服薬に移行することが念頭になっています。しかし、高齢者では誤嚥性肺炎の問題などから、一週間以上長期内服できない患者さんが多くなります。
すると、夜間の安全を確保するには十分寝てもらう必要がある→注射のBZ系薬剤は使えない→ハロペリドールが長期使用される(しかし寝ないので身体抑制が必要になる)という悪循環に陥りやすくなります。
現場でおこっていること〜⑤ 高齢者の急増:糖尿病
さらに、高齢者では糖尿病のや腎臓の機能の問題も無視はできません。内服薬でのせん妄治療の第一選択であるクエチアピン(セロクエルⓇ)は、糖尿病では禁忌となっています。糖尿病は潜在患者が600万人もいると言われています。とてもよい薬ですが、一般的な疾患で禁忌となるため、実際の指示としては医療安全上のリスクが高くなります。
もう一つ、リスペリドンは腎機能障害での注意が必要になりますが、高齢者・入院患者さんでは腎臓の機能に問題が生じやすく、生じた場合にこまめにリスペリドンから他の薬剤に変更を加えなければなりません。
入院となったもともとの治療に忙殺されるなかで、専門外の薬まで細かく神経を使う、残念ながらスーパーマン(=八百屋でありながらプロの肉屋と同じ知識)がいないと成り立たたない治療は、現実の対策としては浸透しにくいものになります。
では、どんな対策がよいのか...それを考えたものがフールプルーフせん妄対策です。
最終更新日2016.2.21