3分で分かる、せん妄って何?
(1)せん妄はからだの病気
「せん妄ってよく分からない」
「精神科の先生をよばなきゃ」
「入院患者さんは認知症もたくさんいる」
「当院には精神科の先生がいない」
このような声はよく聞かれます。実際、せん妄チームも精神科の先生がやられることが多いですよね。でも、せん妄は精神科の病気ではなく、からだの病気なんです。
せん妄はからだの病気。脳の病気である認知症とは根本的に異なる
治療の主体は精神科ではなく、からだを診る一般診療科
こう書くと「幻覚をみたり、おかしなことを言ったり、暴れたり、ほとんど認知症と同じ」と思われれるでしょう。
近年のとらえ方としては、せん妄を一言で表すと「急性で続発性の脳機能障害」の一つの形で、さらに言うと意識障害です。”続発性”なので、基本的に原因となるからだの病気や薬があります。決して精神の病気ではありません。
この図でみてみましょう。土(=からだ)がおかしくなったら、幹(=脳幹・意識)がおかしくなりますね。これがせん妄の意識障害です。幹が異常ですから、枝や葉(=大脳など・高次機能)もそのままではいられません。これにより「脳のあちこちがうまく働かない」ので精神症状がでます。
それに対して、枝や葉の病気で脳がうまく働かないのが、統合失調症、うつ病や認知症などです。外から見ると、枝葉が目立つので一見同じように見えてしまうのです。
急性期病院でせん妄を発症した高齢者:退院後1年以内死亡率 約30%1)
1)Mccusker J, Cole M, Dendekuri N, et al.:The Course of Delirium in Older Medical Inpatients .J Gen Intern Med 18 : 696-704, 2003
参考書籍
和田 健. せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス. 新興医学出版社, 東京, 2012
日本総合病院精神医学会薬物療法小検討委員会. せん妄の治療指針.星和書店, 2005
Valerie Page著 鶴田良介監訳:ICUのせん妄 Kinpodo, 2013
上村恵一 他編.がん患者の精神症状はこう見る抗精神病薬はこう使う:じほう, 2015